ど~もVHSです。今回は「日本の特撮ヒーローの未来は」というちょっと小難しい話です。
そのためにまずアメコミ映画の話から。
私は日本の特撮ヒーローが大好きですけど、アメコミヒーロー映画も好きです。特にマーベルスタジオの映画、アイアンマン、キャプテンアメリカ、ハルク、マイティソー、そしてそれらが一堂に会するアベンジャーズ。大好きです。
まったく関係ありませんが、文字ばかりだと飽きるので入れました。
アメコミ映画は昔からありますけど、近年なぜこんなに盛り上がっているのかご存知でしょうか。それは「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCUと略します)」という一大プロジェクトが成功しているからなんです。これは何か。
簡単に言うと、ヒーロー映画それぞれが単体で独立していながら、世界観がひとつながりの統一された世界で進行している作品群です。マーベル・スタジオという製作会社が一貫して作っています。
MCUは2008年のアイアンマンから数えて15作品、繋げると壮大な物語になっていて、その伏線の散りばめ方もハンパじゃありません。サノスというラスボスが実際に対面するのに10年もかけてるんですよ!
でも、MCUが成功しているのはそれが直接の理由ではありません。
成功しているのは
「どの作品も面白いから」です!シンプルですけどこれは凄い事で、映画界の歴史上、奇跡のような事が起きているんです。
どのような奇跡か。それは
「好きな人が才能を発揮し愛情こめて作った映画は面白い」という客観的事実が、ビジネスとしてきっちり認められ成立しているというところです。
そもそもこのプロジェクトは、マーベル社のコミックスが大好きで、そのヒーローたちを「自分たちが求める最高の形で映画にしたい」と立ち上がった人たちが興したものです。いわばオタクの情熱によって築き上げられたプロジェクトなんです。
映画産業は巨大なビジネスですから、多くの人が関わりマーケティングなど細かなデータ分析によって映画の方向性が創られます。監督の作品であると同時に、多くの人に受けるように作られた商品である訳です。
今までのヒーロー映画もそうでしたが、にも関わらず作品のクオリティはバラバラで、不人気になればリブート(無かったことにして新作を作り直す)を繰り返してきました。そういう状況をオタクたちが危惧していた訳です。違う、そうじゃない!俺たちに作らせればもっと面白いのに!と2005年頃から本格的に動き出したようです。
そうしてオタクたちが立ち上げたMCU作品のクオリティや世界観が統一されているのは、ケヴィン・ファイギという天才プロデューサーにしてマーベルスタジオの製作社長がいるからです。この人こそがオタクの親分であり、その情熱やこだわりがMCU作品をしっかりと面白いものにしていると言っても過言じゃないと思います。もちろん、映画を成功させるのは好きなだけじゃなく尋常じゃない才能や管理能力も併せ持っていなければなりませんが。この人にはそれがあった訳です。
ケヴィン・ファイギ
ハリウッドは気づいたんです。「好きなやつが作った方が面白い」と。作品に対する愛も知識もファン心理も無い人間があーだこーだ方法論を唱えて作るよりも、好きで好きでたまらない奴がこだわって作った作品の方がファンも喜ぶという事を。
他作品の話ですが、そうやって抜擢されたギャレス・エドワーズ監督の「ローグ・ワン スターウォーズストーリー」も成功しましたね。
さてMCU作品が成功を続けてきて、更に奇跡が起こりました。それが「スパイダーマン ホームカミング」です。
スパイダーマンの映画化の権利は他社に売り渡されていて、マーベルスタジオにはありません。だからアベンジャーズには参加してこなかったのですが、このほどMCUに「帰ることが許された」のです。権利を持つソニー・ピクチャーズとマーベルスタジオ(配給はディズニー)が歴史的な契約を結び、ソニーピクチャーズ作品でありながらMCU作品でもあるという特別な状態を許されたのです。現に、スパイダーマンは「シビル・ウォー/キャプテンアメリカ」に登場しますし、「スパイダーマン ホームカミング」にはアイアンマンが登場します。
理由は
「その方が面白いから」「ファンが望んでいるから」
オタクたちの情熱、キャラクター愛が作品の質を高め、結果的に映画配給というビジネスを大きく動かしたのです。私は映像制作者のはしくれとしてものすごく感銘を受けています。
関係ありませんが文字ばかりだと飽きるので入れました
長くなりましたが、ここで日本の話です。
いま日本の特撮ヒーローは岐路に立たされていると思います。
もともと玩具の販促という側面が強い日本のヒーロー番組ですが、近年は少子化の影響か、ビジネスとしての色合いが強すぎるんじゃないでしょうか。アイテム数もキャラクター数も過多、映画作品もレギュラー化して乱造に陥っているように思います。
私の個人的な主観なので、気を悪くされたら申し訳ありません。
思えば日本の特撮ヒーローは昔からその課題を背負っています。「ビジネス」と作品としての質、子どもたちへの「メッセージ」。そのバランスは現場の人たちの才能や良心で支えられてきました。日本の特撮ヒーロー作品がもつ「ファンに愛されつつ、広告としての役割も担っている」というのはコンテンツとして理想的だと思います。
それが崩れつつあります。このままでは「面白くない広告」になってしまうんじゃないでしょうか。
アメリカのオタクたちが立ち上がって映画のビジネスを変えたように、日本の特撮ヒーローも「好きな奴がこだわって作れる」環境を整えた方が、結果的にビジネスもうまくいくんじゃないでしょうか。
そのパイオニアとなれるのは、実はご当地ヒーローなんじゃないでしょうか!ご当地ヒーローこそが「面白い広告」となりうる存在だと思います。しかも宣伝するのは「地元」という商品。あなたの地元をあなたの地元のヒーローが面白くするとすれば、それは立派なビジネスじゃないでしょうか。
不肖そう思う私であります。
余談中の余談ですが、アメコミヒーローはもともと舞台設定にきちんと実在の町を使うことが多いので、そもそも「ご当地ヒーロー」だと言えます。キャプテンアメリカはニューヨークのブルックリン出身、スパイダーマンは同じニューヨークのクイーンズで活動しています。